こういうことって許されるのですか?
【回答】
労働者の都合で働かなかった分について給料が支払われないことは違法ではありませんが、就労しなかった程度を超えて減額することや、給料を没収したりすることは許されません。
また、懲戒処分として減給する場合も、あらかじめ決められた懲戒規定に従って適正かつ妥当な範囲で行わなければなりません。
■ルール違反の責任と限度
遅刻や無断欠勤は非難されるべきことですし、法律的にも、契約上の義務を果たさなかったことへの責任が発生します。
だからといって、会社は何をしてもいいという訳でもありません。
遅刻や欠勤が会社の責任によるものでない以上、会社はその時間について給料を支払う義務はありません。
ですから、所定労働時間のうち、働かなかった時間に応じて、労働契約や就業規則の定めに従って、その分の賃金が減らされることは違法ではありません。
しかし、遅刻した後で、実際に働いた時間分の賃金を減らしたり、没収したりすることは、就業規則等で定める懲戒処分として行われる場合を除いてできません。
働かなかった時間に対応する額を超えて給料を減額することは、実質的には労働基準法が禁止する損害賠償予定にあたると考えられます。
あらかじめ労働者が支払う損害賠償額を決めてあったとしても無効です。
没収するなどの行為は、当然に違法です。
■懲戒処分のルール
多くの企業では、労働者がルール違反をした場合に、就業規則で譴責あるいは戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇などの懲戒処分制度を設けています。
懲戒事由の主なものとしては、業務命令違反、職務違反、無断欠勤、信用失墜行為、職務外非行などがあります。
遅刻も、このような制度が対象とするルール違反行為であると言えるでしょう。
しかし、会社が懲戒処分をするときは、あらかじめ処分の事由、内容と程度を就業規則や契約に定めておいて、それを労働者に事前に知らせておくことが必要です。
そして処分は、その規定に従って、本人に弁明の機会を与えるなど適正な手続にのっとって行う必要があります。
さらに、それらの条件を満たす処分でも、不当な目的で行われたり、労働者の行為と比べて処分の内容が重たすぎたりすると、無効とされます。
遅刻は確かに悪いことですが、会社が改善のための指導や警告をしないまま、数回程度の遅刻という結果だけで懲戒解雇することは、社会的な相当性を超えると判断されるでしょう。
■懲戒処分で減給できる程度
懲戒処分として減給を行うことには、労働基準法で上限額が制限されています。
1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超え、2、総額が一賃金支払期(月給制なら1か月となります)における賃金総額の10分の1を超えてはならないとされています。
また、たとえ懲戒解雇されてもやむを得ないような場合でも、既に働いた分の給料を不支給とすることはできません。たとえ事前に決めてあったとしても、没収はできないのです。
ただし、退職金については、懲戒解雇のときに支給しないことが就業規則などで定めてあって、退職金を不支給とするのに十分な非行が労働者にあった場合には、支給しないこともできます。
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