2020年09月28日

勉強会「あっせん体験」

9月19日(土)13〜16時 難波市民学習センター セミナー・展示室 テーマ「あっせん体験」



先日、大阪で開かれた「あっせん体験」に参加してきました。



「あっせん」は、主に都道府県労働局などで個別の労使の「もめごと」などを、「あっせん委員」が双方の主張をきいて、要点を整理しながら解決にあたる手続きです。

紛争解決の手続きとしては、訴訟を起こすことに比べれば、断然、時間も手間もお金もかからないのですが、おそらく知らないという方も多いのではないでしょうか。



「もめごと」とか「紛争」という言葉に拒否反応や忌避感情を持つ方もいるかと思います。

私も、もめごとや争いは好きじゃありません。



「あっせん」を辞書で引くと「間に入って,両者の間がうまくいくようにとりもつこと。また,ある物や人を求める人に紹介すること。周旋。とりもち。」(三省堂「大辞林 第三版」より)と書かれています。

つまり、「あっせん」は、お互いがうまくいくように間をとりもつことなのです。



ケンカするのではなく、双方が納得、とまでいかなくても「まあ仕方ないか」くらいの感じでも、「和解」することを目標に、あっせん委員は双方の話を整理し、それぞれに働きかけることになります。

セミナー展示室2.jpg

前置きが長くなりましたが、今回の勉強会はこの「あっせん」が実際にはどのように行われるのか、ロールプレイで学んでいこうというものです。



講師は、あっせんの経験豊かな、特定社会保険労務士の須田美貴さん。



まず「労働者側(代理人)」「使用者側(代理人)」「あっせん委員」と、三つの役割にグループを分けます。

今回は労働者側からあっせんの申請があったという設定で行われました(もちろん会社側からも申請できます)。

十数名の参加者がそれぞれの役割に分かれて、あっせんは始まります。



役割ごとに打ち合わせの後、まずは労働者側代理人が、事務局の声掛けによりあっせんの場に呼ばれます。

あっせん委員はあらかじめ労働局に提出されたあっせんの申請書をもとに、事実関係を聴取し整理します。

労働者の主張の確認がひと段落すると、労働者側代理人には退出してもらい、今度は使用者側代理人が呼ばれ、事情聴取を受けます。

このとき、同時に話を聞くことはなく、それぞれ個別に事情聴取や和解案の調整などが行われます。



何度かこの手順を繰り返し、双方の主張の食い違いなどが整理されていくのですが、あっせんはどちらが「正しい」のかを決めるための制度ではありません。



「正しい」かどうかよりも、お互いにどこが引っ掛かっているのか、どこを妥協すれば和解できるのか、それぞれの言い分を聞く中で、互いの主張する事実関係と和解案のすり合わせをしていくことが重要なのだと今回の勉強会では学んだように思います。



裁判では、双方の主張の食い違いを一つひとつ事実認定していき、最終的にどちらの主張がより「正しい」のかを判断します。

しかしながら現実には、価値観の違いや思い込み、単に知らなかっただけ、行き違い、人間関係のこじれ、コインの裏表のように同じ事実でも見る方向で違う模様が見えることもあったり、「正しい」が人それぞれに違っていて、それぞれに正しいことがあります。



特定社会保険労務士として、労働者代理人または会社代理人を務めるとき、依頼者の利益を求めることが本来的には当然なのかもしれませんが、正しさだけでは割り切れない部分を調整していくためには、依頼者に落ち度があれば率直に話をし、時には現実的な妥協案を提示していくことも必要なのかもしれません。



結局、和解できなければ「打ち切り」になってしまうのですが、ロールプレイの中であっせん委員役をしてた方が「ぶっちゃけ、いくらなら和解します?」と、斬り込んでいたのにはシビれました。



そのあとの懇親会で、ふかふかのシュウマイをつまみに生ビールをのどに流しこみ、「そうだよね、最終的には金銭解決になってくるんだから、そこ聞かないと終わらないよね」なんてため息交じりにつぶやいた、大阪の夜でした。



記事担当:藤井

NPO法人労働者を守る会ホームページはこちらクリックしてね

posted by 労働者を守る会 at 07:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 勉強会