2015年06月07日

本人尋問

こんにちはexclamation裁判傍聴チームの柏木です。
西日本各地が梅雨入り雨とのこと。じめっとする季節が今年もまたやってきましたね。

さて裁判傍聴チームでは労働問題のみにとらわれることなく定期的に裁判を傍聴しています。
今回は昨年来傍聴を続けている特定秘密保護法違憲訴訟第6回公判を傍聴しに東京地方裁判所に行ってきました。

今回の日程は「本人尋問」のために組まれたものです。
「尋問」というとものものしいかんじですが、この裁判を訴え出た本人にそもそもなぜこの裁判を起こしたのか、ということを質問にこたえる形で言わば意見表明をしてもらう場です。

とは言えそこは裁判ですので思いつくままになんでもかんでも言っていいわけではなく、まして嘘や架空の話をするなど論外です。尋問の前には裁判官も傍聴人も全員起立する中で真実だけを述べるという宣誓をします。

尋問そのものは訴えた側(原告)の弁護士さんが本人に質問する主尋問、訴えられた側(被告)の弁護士さんが本人に質問する反対尋問で進行しますがこの日は反対尋問は行われませんでした。
この本人尋問が終わると結審(双方の主張が出尽くした判決の直前の公判)がぐっと近づきます。
さて、判決はどうなるでしょうか・・・・・。

まったくの余談ですが、この裁判に興味を持たれた比較的有名な現職の国会議員の方も傍聴に来ていました。話しかけてみたかったけど勇気が出なかった小心者のワタクシめでした。おあとがよろしいようで。

NPO法人労働者を守る会ホームページ

労働者を守る会

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2015年06月04日

「こころの診療室」に勤務して心の病になってしまった看護師さんのお話

いじめはダメよと子供たちに言っている学校の先生の世界にいじめがあったり、過労で倒れた人を助ける医師や看護師が過労で倒れたり、労務管理の専門家である社労士事務所が労基法違反をしていたり・・・

これもそんな話です。

早稲田大学の「こころの診療室」に勤務している看護師さんが職場の嫌がらせにあってこころの病になってしまったという実話。

概要はこちら ※My News Japan にリンクしています

ご本人の許可を得てブログに掲載しています。

精神的に辛い状況になってしまった学生さんが診察や治療に訪れる「心の診療室」に勤務していた北野さん(仮名)は、この職場で嫌がらせにあい退職。労働局のあっせんに会社が応じなかったので次にどうすればよいかと守る会に相談に来られました。
当初、労働審判を視野に入れられていたのですが、相談員は反対でした(理由は後述)。
何度もご本人からお話を伺い、訴えることのメリットやデメリットを伝え、誰に対して何をしたいのか目的を整理することにしました。

結果、審判という解決方法ではなく、広く世間にこのことを知ってもらうため、ライターさんにお願いして記事にしてもらうという解決方法に至りました。
相談員のわたくし須田がインタビューに同席しました。

なぜ、相談員が審判に反対したか。
それは、会社側(学校側)に違法性が見当たらなかったことと、ご本人の気持ちが整理できていなかったからです。

違法性がない労働問題?

労働問題は大きく分けて2種類あります。
労働法違反の問題と、労働法違反ではないいじめや嫌がらせなどの問題。

この方は後者でした。最近は後者の相談が多いです。
いじめや嫌がらせも訴えることは可能です。
しかし、まずはご本人にどうしたいのか、何が目的なのかを整理してもらわないと、それができていない段階で訴えてもすっきりしないことがあるのです。

法律違反ならどこが問題なのか白黒つきます。
しかし後者の問題は、どこが問題だと感じているのかご自身で整理できていないと、聞いた人によっても捉え方が異なり、本人の主張とずれてしまう危険性が大きいのです。
なぜならば、法律ではなく感情が占める割合が大きい問題だからです

ですから、話を聞いた人によっては、
「それ、あなたにも問題があるんじゃない?」「そんなことを気にしていたら仕事できないわよ」「違法性はないよね」
で終わってしまうんです。

上司や社内の相談窓口でもわかってもらえなかったという声を聞くことがありますが、原因はここなんです。
整理できていない段階で話しても感情任せになってしまい、主張が伝わらない。

いや、そんな状況で整理できないでしょ

と言われそうですね(^_^;)
守る会では、まずは一緒に整理しましょうという段階から始めます。
整理ができたら、裁判が良いのか、広く知ってもらいたいのか、社内での話し合いができそうなのか、経験からアドバイスしています。


聞く人によって捉え方が異なるというのは、相談員のあいだでもあります。
今回はインタビューの際に、ライターの林克明さんから「これは非正規職員への差別だ」と言われて私も初めてその部分に目が行きました(お恥ずかしい話ですがそれまではそこに気づきませんでした)。

会社の対応として、
「法律違反はしていないから問題ではない」「君の考え方を変えればいいのではないか」
という発言をされたと、よく聞きます。
友達同士ならアリかもしれませんが、上司や会社としての対応としてはNGです。

ライターの林さんから、このケースはパワハラに当たるのか、専門家の目線からはどうか?と質問され、私も、
「厚労省が出しているパワハラの基準には当てはまらないし、上司の発言に違法性はない」
と答えてしまいました(上記で述べた、会社の対応としてはNGですをそのまま答えてしまいました(ーー;))

法律相談に行って弁護士さんから「気持ちわわかりますが、違法かどうかと言われれば違法ではないです」と言われてがっかりされる方がいると思いますが、法律のみで判断するとこういう回答にならざるを得ないのです。法律家としてもジレンマ・・・

しかしその後数日間自分の発言を振り返り、一言忘れていた事に気付き、メールをしました。
「厚労省が出しているパワハラの基準には当てはまらないし、上司の発言に違法性はない」
だからといって問題ないわけではない!

今回のケースのように、自分の考え方がおかいしいのか、自分が悪いのか、自分が辞めればいいのか・・・
そのように精神的に追いやられるケースが増えていると感じます。

会社としてそのような解決方法はよろしくないですね。
もし「私が悪いのかな」という心理に追い込まれたらまずはご相談ください。

最後に、ご本人からコメントを頂いているのでご紹介します。

「今回大変な経験をしましたが、同じような立場の方々の何かの役に立てばと思い、勇気を奮って記事にしていただきました。辛く恐ろしい記憶を何度も思いださねばならず、その度に逃げ出したくなる程、心身ともに本当に苦しかったです。法律の冷たさみたいなものも味わいました。この年になって自分は何をやってるんだろう、何でこんな苦労しなくちゃいけないんだろうと思ったこともありました。しかしながら、今思えば、これは弱い自分自身としっかり向き合った大切な時間で、今後の人生を幸せにする準備のために必要だったのだかもと思っています。最も大変だったとき、運よく須田さんとの出会いがありました。恥ずかしい話ですが、今回の経験であっせんのことや、社会保険労務士という職業を初めて知りました。ハラスメントされたおかげで労働紛争からジャーナリズムのことまで勉強になりました。初めてのことばかりで不安も大きく、紆余曲折あって時間もかかりましたが、やっとここまで来れました。本当にありがとうございました。」

私も、このブログや北野さんのコメント、もちろん林さんの記事も、同じように困っている方のお役に立てればいいなという気持ちで掲載しました。

法律で白黒つけられない問題でも問題なんです。

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posted by 労働者を守る会 at 11:43| Comment(0) | TrackBack(0) | いじめ・パワハラ